私の髪を梳いた

宗十郎様の手が止まり、


「私の簪、

さっきまであっただろう」


「…大丈夫です、

失くしてしまわないように

懐にいれております」


「…なら、何故…

私のではなく生島新五郎が、

女の誰にも譲らない簪を挿している」


「ち、違います…

ただ…もらっただけなのです」


絵島様がまさかここで怒るなんて思いもせず、

気づきました。


絵島様は生島様を愛していらっしゃり、

私を邪魔だと思ったことでしょう。


「一途に思う娘を偽っていたなっ!!

さすが、遊女か」


「違うのです!」


「本当にそういうのか。

あの男は夫婦になる相手にのみ

飾りを渡すというておった…。

お前の嘘など、信じぬ」


「そんな…そんなこと…絵島さま…」


使いに引きずられる私を

助けてくれない宗十郎様は、

恨む相手を憎む目でにらんだのです。


訳など言えない自分は籠から牢屋、

一人でどうすれば良いのか考え、

ずっと悩みました。


「……宗十郎様

…私は貴方様がいないと

生きてはいけないのです」


「時間だ。

吉宗様がおよびになられている」


女性の僧侶が私の牢を開けて、

見繕うしかありませんでした。