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私らより先輩であるので、

呼び立てるのも忍びないわけだが、

なにごとに帰られる女のためだ。

「…唐突すぎると思わぬか、宗十郎よ」

「存じている。だがしかし…」

「お前の桐里は…

そこまで美しい女子なのか?」


知ってどうするというのだ。

色男は数多くの女を手に入れてきたのだろう。

言わなくてもよかろうに。


「私が申しておるのは、

そういうことではない。

美しいかどうか生島殿には

何ら関係はないはずだ」


「…私が手を貸してやろうか

という話ではないのか?

桐島の御嬢さんだろ、株を売って何が悪い」

「良いのか、

絵島殿との恋仲についてばらしてしまっても。

山村座の安泰も危ぶまれるな」


さすが菊乃丞、嫌味の言葉には長けているか。


「何の話だ。初耳…、

絵島知らぬ名であるな」

「しらばっくれても

足はついているぞ…嘘か真かは

そのうちに分かることだ。

急ぐ必要はない」


生島殿は舌うちで私らを睨んだうえ、


「知らぬ。

だが、桐里には興味がある。

徳川に見初められた挙句、

官職の奴らの傀儡、

それからお前たちの桐島座も…な?」


話したのが間違いなのか?


「お前ら、

大奥の女中は今日にあらわれるか?」

「あらわれます」

使いの者たちがそう申すに

役者が煙管を向けては、


「郭の中の蝶の蜜を楽しませてくれ。

按ずるな、

私が娘と祝言を上げてもよいと言っておる。

そうだな、お前たちは茶会の相手をしてくれ。

桐里相手は私が引き受けよう」

「っ何を!桐里を、

お前のような男に渡してたまるか!」

「やめろ宗十郎!

これは桐里を守る手段であり、

桐島様の命なのだ」


「納得がいくか。

桐島様は娘に霧里様と

同じ運命をたどらせるとおもうのか」


ただ一人の高らかな笑いで、

この場を締めることになった。