―――
まさか、
絵島という女が屋敷に来ると思ってはいなかった。
そして逢引きの刻を
用意してくれるなんて驚き喜んだ。
肌寒いが
夜に外を出でて開かれている門の後ろに、
あの人が俺を待っていると。
開き息をひそめて蔵に行こうと歩く先に、
「宗十郎様ぁ…っ」
「桐里…!」
愛し焦がれる乙女の姿があり、
涙の再会あまり抱きしめる。
「…私を守るために
体を差しだしたと聞いている」
「いいえ、
宗十郎様のためなら構いません」
俺の胸に顔を摺り寄せる
桐里の幼さを愛し
虐げる幕府を恨んだ。
「今、
桐島様が嘆願をしなさっている。
天英院て名の女に
頼めば何とかなるかもしれぬと」
大きくうなずいたはいいが、
本当に何とかなるかは…分からなかった。