「はい、 田沼様は此処にいてはいけません。 私は一人が好きなのです」 「あんなに役者に恋い焦がれていたくせにか」 「それは宗十郎様だったからです」 「…桐里、もっと近くに来い。 非常に話ずらい」 「……はい」 また誰かと檻越しで話すのは 避けたいのですが…。 宗十郎様を思い出してしまうのです。 「こちらの穴を通して、 宗十郎様と手をつないだのですよ」 「何故江戸に来た。 生まれは江戸ではないだろう」