――― 「何をしている!」 菊乃丞が現れて止められたわけだが、 桐里が何を考えているか分からなかった。 単純だからこそ、分からない。 「桐里様に何をしているか、 と聞いているんだ」 「ひたすらに…抱きしめた…」 完全に嫌われたと思う。 「…宗十郎様は、 “今さら”と言いました、 それは私にも言えることです」 数度心が揺れるのは、 ずっとそう思っていたいからだった。