泣いてしまうぐらいなら見ない方がいいんです。
彼らが通ってきた道を逆進して、
誰も見られないところで
命を絶とうと思ったのです。
こんなにも
自分が死にたがりだって思いませんでしたが、
絶対の約束は約束です。
切っ先がとがった簪の先端を
左の小指の第一関節めがけて突き刺したのです。
「っん……」
これで宗十郎様は自由です。
私が桐島の娘だから、
従った宗十郎様ですもの。
けれど、
私は本当に愛していたのです。
恋を教えてくれた宗十郎様には
お礼をしたのでしょうか…。
帯を締めていた紐を外して
首が入るくらいに紐で輪を作り、
森の幹を上ってくくりつけました。