――― 「宗十郎様、 本日の出演で客入りがうなぎ上りでございます」 「…そうか」 帰りの途中、 客寄せの手伝いをやらされるところを 桐里には見られたくなかった。 奥底から愛した女の涙は見たくはなくてだ。 「門前町から来たとお聞きしました」 色恋めいた女が 自分の腕に巻きつくことすら嫌になる。 慣れたはずが純粋の太夫に出会って 苦痛でしかならない。 「私は田舎者故、 江戸を案内していただけないか」