―――
胸が高鳴るこのことを、
俗に恋愛をしているというのだろうか。
「吉宗様は先ほどからどこか遠くを見ているようです」
「うむ。
世は布巾の娘にもう一度会いたい」
側近が驚く顔して、
今すぐにその娘を探そうという。
それでは桐里が可哀そうだった。
「いい。世が自分で見つける」
「江戸は広いですよ。
吉宗様がおひとりで
お探しになるのは酷かと」
「純粋な乙女だった。
外見が美しいだけではない、
心もうらやむ美しさ…」
居てもたってもいられず、
老中に暇をだし将軍である世も
恋に堕ちてしまうのだった。