「いいや…。

桐里は桐島様の娘、

危険に晒すわけにはいかない」


「分かりました。待ってます」


「…吉宗、といったか。

その男に保護してもらうのもいいかもしれないが、

幕府は歌舞伎役者を煙たがる、

だから…」

「吉宗さまは江戸を教えてくれるそうです。

私が遊女であったことを

煙たがりはしませんでした」


眉間にしわが寄ってしまう宗十郎様が

不機嫌になってしまったようで、

後ろを向いてしまうのです。


「…私より吉宗を選ぶのか?」

「そんなっ、そんなわけありません!

桐里は宗十郎様のものです」


「なら、私の言うことよりも

吉宗と話す方が楽しいのか?」

「違います!吉宗さまじゃなくて、

宗十郎様と話している方が楽しいです」


「…桐里、それを確かめる」