「化粧をしなくても、美しいな。
気品も感じられて…宝石でも見ているようだ」
「…それで宗十郎様が苦しんでしまう、
危ない目に遭ってしまうのなら…
この感情もお母様も感じたのでしょうね」
「桐島様は、
霧里太夫を幸せにさせてやりたかったはずだ。
郭の中の人形にしたいがはずがない
…終わったか」
「ええ、はい。終りました」
「…ではいくか」
行く当てもない、
日本という国を歩くに果てしない道に感じてしまうのです。
私を守るその道は秋良様の追ってが
来なくなるまで終わりが見えません。
強く握って繰られる右手が私の頼れるものでした。