―――
「…宗十郎さま…?」
足音が箪笥の後ろに人がいるように聞こえて、
白色の浴衣を纏いつつ、
そっと忍び足で近づきました。
「隠れていらっしゃるのですか、
宗十郎様」
好奇心は一点に集中しており、
判断が遅れたのも言わずと知れています。
「んっ…んん!」
強い力に拘束され、
布巾で口と鼻を閉ざされてしまい、
正直この後のことは覚えてはおりません……。
うっすらと見えたのは、
宗十郎様でも菊乃丞様でも、お父様でも、
役者の方々でもありません。
(宗十郎…さま…)
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