「結衣!」
遠くから香織の声が聞こえた。
放課後であふれる人をかきわけて、
やっとあたしの前に立った。
「一緒に帰ろ!」
「うんっ」
入学して、
残念ながらクラスは別れたけれど
行き帰りは一緒だし、
お昼休みも一緒にいるぐらい、
仲は続いていた。
「ね、結衣は部活どうするの?」
帰り道、香織が聞いてきた。
「もちろん軽音部だよ」
「あたしも!」
奇遇にも、
香織もギターをやっていた。
あたしみたいな初心者とは違って、
中学の頃からやっていたらしい。
あたしは高校を機に始めたばかりなんだけど。
「あの先輩、いるかな」
「文化祭のときの?」
「うん」
「もー・・・あたしに感謝してよ?」
「ん?」
「あたしが誘わなかったから、会えなかったんだから」
「はいはい」
それは、ついこの間のこと。