「2人とも、おはよう。」
先に座っていた母親である九條美和子が2人に声をかける。
「お母様、おはようございます。」
「あれ?お父様は?」
父親の姿が見当たらず、美奈子はキョロキョロとあたりを見回す。
「用事があるから先に食べて応接間にいらっしゃるわ。」
「ふーん。」
今までどんなに忙しくても食事だけは家族としていた父が珍しいと秋紀は思った。
まあ、父にも用事ぐらいあるだろうと気にせず朝食を食べることにした。
パンにバターをつけて口に入れる。横ではオムレツを美奈子が頬張っている。
「秋紀ももう17歳だものねえ。あと3年で成人だものねえ。」
母の言葉に秋紀は照れたようにもう一口パンを口に入れた。
「秋紀は可愛いからそろそろちゃんとした護衛が必要ね。」
もちろん美奈子もだけど。と母は付け加える。
「護衛?麻耶がいるじゃないですか。」
「麻耶さんは女性でしょ?力で男の人には敵わないわ。」
ああ、そういうことか。と秋紀は納得。
「今まで何もなかったから大丈夫ですよ?」
実際に今まで襲われたことなどないし、男友達もさほどいない。
というか、いても学校で話す程度だ。
どうせ両想いになれたとしてもお互い政略結婚になるだろう。
お金持ちとはそういうものだ。
「お姉さま?」
黙り込んでしまった秋紀に遠慮がちな声がかかる。
「あ、いえ。まだ私には早いわ。それに私は学校以外この家からあまり出ないし、学校も送迎は車だもの。」
そう言う秋紀に母は納得していない様子だ。
「そう?まあでも、それを決めるのは私じゃなくてお父様だものね。」
「そうですね…」
さすがに父でもそこまで心配はしないだろうと秋紀は考えないことにした。