「お嬢様、そろそろ。」
麻耶に言われ、秋紀は服を着替える。
…といってもメイド達が手伝ってくれるのだが。
あまり派手な服を好まない秋紀は、大人びたベージュのワンピースを着る。
胸元に白のリボンがついていて大人っぽいと同時に可愛らしいワンピースだ。
膝近くまでと丈は意外と短く、下はフリルになっている。
「髪を結いますね。」
そう言って麻耶は秋紀の黒みがかった茶色の髪を結い始める。
腰あたりまである髪は綺麗に手入れされていてサラサラと美しい。
次々と結われていく髪を見ていつも麻耶はすごいと思う。
一度自分で結おうとしたことがあるが、サラサラすぎて結っても結っても落ちてしまう。
しかも麻耶は毎回、手の込んだ結い方をする。
今日は編み込みをして後ろで結ぶ。全部はまとめずに後ろの髪は残す。
今日のは大人しい目の髪型だが、たまに細かい編み込みやら髪の毛でリボンを作ったりする。
「麻耶は何でもできるんだものねえ…」
日頃思っていることをつい声に出してしまった。
「これが仕事ですから。」
麻耶はにこっと微笑む。
仕事といっても彼女は22歳と若く、とても美人で結婚していてもおかしくない。
それなのに自分の世話係なんかしてくれるのかと秋紀は少し嬉しくなった。
いくらでも出会いはあったはずなのに…
「ねえ、麻耶は今の仕事が好き?」
秋紀が聞くと麻耶は驚いた顔をする。
そしてまた微笑んで
「はい。この仕事も秋紀お嬢様も大好きですから。」
と言った。
その言葉にまた秋紀は嬉しくなった。
「私も麻耶が大好きよ。」
秋紀がそう言うと麻耶は、ありがとうございます。と恥ずかしそうに笑った。