「えっと、ここで右足を…あ!間違えた!!」
執事である朝陽は11時には自分の部屋に戻り、風呂や着替えを済まして12時頃に就寝。
…という行動を知っていたので、秋紀は1時頃にもぞもぞとベッドから這い出し本当に小さな音で曲をかけた。
これなら朝陽には気付かれない!という自信もあった。
はずなのだが…
「そこは左が前ですよ。」
「え!?」
急にドアの方から声がした。
間違いない、この声は…
「朝陽…」
「こんな夜中に起きていられると、明日起きれませんよ?」
ドアを開けるとにこにこした朝陽が立っていた。
とりあえず廊下だとみんなが起きてしまうので部屋の中に入れる。

「いつから前にいたの。」
「少し前からです。」
「いつもはとっくに寝てるじゃない。」
「少し考え事をしていて風呂に行くのが遅くなったんです。」
秋紀はガックリとうなだれた。
何故よりにもよって今日!と叫びたくなった。
1番気付かれたくない相手に気付かれるとは…
「お嬢様は努力家ですね。」
「そんなことないわよ。」
こう言われるのがわかっていたから嫌だったのだ。
嫌というか恥ずかしいのだ。
「とりあえず今日はもうお休みになってください。明日また練習しましょう。」
なんなら添い寝して差し上げますが?といたずらっぽく言う朝陽を部屋から追い出し、ベッドに潜り込む。
親しくなるほど朝陽は冗談を言うようになった。
その冗談が秋紀をドキドキさせるのだが…
そして翌日から反対する秋紀を無視し、朝陽が相手役としてダンスの練習に付き合ってくれるようになった。