「本日はどちらに?」
17歳の誕生日を迎えて1ヶ月近くが経ったある日、秋紀は朝陽と一緒に外にいた。
「ちょっとね。」
黙って歩く秋紀。それについて行く朝陽。
この1ヶ月で麻耶がいないのにもずいぶん慣れた。
「お嬢様は移動に車とか使わないんですね?」
初めて秋紀と外に出た朝陽が意外そうに言う。
「外を歩いたり、バスや電車に乗る方が好きなのよ。」
そう、秋紀はお嬢様なのだが自家用車を使うのがあまり好きじゃないのだ。
もちろん、家族が一緒の時は乗るのだが
九條家に入る前から歩くことが好きだったのと、ただ昔みたいに自由にウロウロしたい。と思うため
外出の際はお付きは麻耶の一人だけ、移動は公共の乗り物。ということを無理やり聞いてもらってるのだ。
今日からは朝陽が付き添いとして一緒に外出するのだが。
「……秋紀お嬢様って変わってますね…」
朝陽がそう言う。もちろん悪気はない。
「自分でもつくづくそう思うわ。」
秋紀も自覚はあるらしく、というより相沢秋紀だった頃の感覚が抜けていない。ということがわかっているので笑う。