狭い居間に通されて、小さな4つ脚のテーブルの周りに座った。
目の前には父さんが注いでくれた麦茶がある。
「…で、話とは?まずは横にいる女性のことからにしようか」
父さんの態度は至って穏やかで、怒っているわけではないようだ。
「彼女は畑辺笑美さん。結婚を前提に交際しているんだ」
「初めまして。お父様のお話は慶起さんから伺っておりました」
「そうか...よろしく頼むよバカ息子のこと」
「ふふっ、はい。」
どうやら父さんとえみの相性は悪くないようだ。
少し二人で話をさせるのもいいのかもしれない。
「ちょっと何か茶菓子でも買ってくるよ」
「あぁ、悪いな」
「いや、いいよ」
財布を片手に家を出てコンビニへ。
スイーツコーナーへと真っ直ぐに向かい、
まず、栗が乗った黄色いケーキを取った。
父さんは昔からモンブランが好きだった。
無類の栗好きで、
旬になると、実家が栗を栽培している会社の人が栗をお裾分けしてくれて、
貰うと嬉しそうに、焼栗にしたり栗ご飯にしたりしていたのをよく覚えている。
次に、えみが好きなチーズケーキ。
で、俺が好きなフルーツたっぷりのケーキ。
他にもちょこちょこつまめるものを買って、あのアパートに帰った。