.
「ま、そういう事だからさ…ね?」
[え?]
手と手を合わせて上目遣いで聞いてくる…。
あまり意味がわからない。
というか、わかりたくないような…。
「だーかーら。彼方の家行って様子見てきたらって事。」
きっと彼女の中では決定事項で絶対の事。
だから何があろうと行かないという決断にする事は出来ない訳で…
[了解]
納得するしかないんだ。
会いたくない気持ちも勿論あって、
あの日を堺に何とも言えない不安があった。
「寂しいもんねー?」
くるくると私の髪を細い指で巻いていく。
机に肘を立てて手のひらに顎を載せると何か思い出したかのように急に立ち上がった。
「これ。彼方に渡して。」
海ちゃんに渡されたのは、キーホルダーのついた鍵。
だけどそのキーホルダーが、
とても懐かしい感じがして…そう。
何処かで見た事があるような。
「んじゃ、担任には適当に理由つけとくから行ってきてね。」
手をひらひらとさせ、にっこりと微笑む海ちゃんに頷いて私も手を振った。
そして記憶を探りつつ廊下に出る。
何故だか人が沢山いて騒がしいのにも関わらず僅かな孤独を感じていた。