重たい目を開けば目の前に斗間君がいた。
それと知らない白い天板が見えて、
どこだろうと見回すと病院の個室のようだ。
確かに左腕には針が刺されていて点滴と繋がっている。
はぁ…と深く安度の息を漏らした斗間君。
(…とー…ま…くん?)
何度も呼んではいるが、一向に返事が返ってこない。
まぁ、理由なんてとっくにわかってる。
声が出ていないからだ。
昔からよくあって…心因性のもの。
その時は辛かったけど、出ない方がいいんじゃないかとも思って何度も現実から目を逸してきた。
「…また出なくなったの?」
いつの間にかそばにいた翔ちゃんがそう言う。
そして、それに頷くとポンポンと頭を撫でてポケットからメモ帳を取り出し目の前に差し出した。
きっとこれで会話しろって事だろう。
起き上がり簡単に言葉を選ぶ。
[ごめんね。]
ただそれだけを書いて。
「本当にだよ。なんであんな雨の中ずっと外にいたんだよ。」
見せると斗間君は黙っていて、代わりに翔ちゃんからの質問。
本当にどうしてだろうね。
とっくに帰ったってわかってたのにな。
今日は来ないって感じていたのに。
[本宮君が来るのを待ってたの。]
なんで、待ってたのかな。