流星に感じた小さな変化。
気にする程の事ではないかも知れない。
冷たくなったり手荒くされたと言うなら、考え込む所だけど、
更に優しくなった事を気にするなんて、可笑しいよね……
でも、もう少しギュッと力強く抱きしめて欲しいと思うのは…
贅沢過ぎるかな……
流星の腕の中で顔を上げると、いつもの優しい瞳と視線が合った。
見つめ合う無言の時間が数十秒流れ……
ノートパソコンの光りが急に落ち、辺りが夜闇に包まれた。
光を失う瞬間、綺麗な茶色の瞳に、チラリと不安げな色が見えた気がした。
気のせい…?
一瞬の事で良く分からない。
彼の瞳の中をすぐに覗き込みたかったけど、
暗闇に目が慣れるまでは、それを確かめる事が出来ない。
だから言葉を口にする。
「流星、最近何かあった…?
何か私に言いたい事はない…?」
「ん?言いたい事はあるよ。
紫を愛してるって、いつも言いたい」
「うん、それは十分に分かってるよ。
そうじゃなくて、何か心配事があるんじゃないかと思って…」
「…… そんな風に見えてる?」
「何と無くだけど…」
「そうか……けど、大丈夫。
心配事なんてない。何もないよ。
信じてるから…ないんだ」
「信じてる?何を?」
「君の強さを…」
意味がよく分からなくて、もっと詳しく聞きたかったのに、流星の唇が私の言葉を奪ってしまう。
「心配事なんてない」
そう言い切った言葉を、鵜呑み(ウノミ)にしていいのだろうか?
流星に感じた漠然とした不安の正体は掴めない。
いや、不安なんて言葉は大袈裟過ぎる。
感じたのは小さな違和感。
そう、この言葉の方がしっくりくる。
そして、そんな小さな違和感なんて…
こうして唇を合わせている内に、キスの甘さに隠され、すぐに見えなくなってしまう……
口の中で、2人の熱がゆっくりと溶け合う。
薄くなる酸素。
頭の中に美酒の様な霞みが広がり、その味と香りに酔いしれる。