初対面の…それも彼よりかなり年下の私達を、鼻であしらったりしない。
こんな風に打ち解け気さくに話してくれて、
そして我妻さん自身が一番楽しそうに見える。
作風からも人柄からも感じる事は、
我妻さんは“人”が好きだという事。
人間が好きで相手を知ろうとして、壁を作らない様に、まず自分から素を見せているんじゃないかな。
自分を見せ、相手の内側も引き出そうとしている。
写真を撮る時も、きっとそんな風に被写体と向き合っているのかも知れない。
素敵な人……
気がつくと店内の客数は疎らになり、ランチタイムは終わったみたい。
賑やかな話し声で聞こえ難かった店内の音楽も、
今はその英語の歌詞を、はっきり聞き取る事ができた。
2人はまだ
「アーニャが…」「紫が…」
と恥ずかしい自慢大会を、さっきよりも楽し気に繰り広げていた。
自慢したい訳じゃなく、論争を楽しんでいるのかも。
波長の合う2人……
冷めたロイヤルミルクティーを口にして、窓の外を眺めた。
秋晴れの空の鰯(イワシ)雲は、柏寮を出発した時と90度向きを変え泳いでいた。
地上12階のこのレストランからは、東京の街の様子が良く見える。
もちろん他にも高層ビルが建ち並んでいるから“一望”とは言えないけど、
遠くにスカイツリーの上部も見え、いい眺めだった。
眼下の混雑する道路は、玩具みたいな小さな車と、ビーズの様に細かな人の群れで溢れそうだ。
東京って、本当人間が多いね……
そう言えば私、人酔いをしなくなったみたい。
東京に来たばかりの時、余りの人の多さに、人酔いして具合が悪くなった。
人に慣れ…そして、相手が何を感じているのかと、自然に考える癖がついたみたい。
富良野の狭い人間関係の中では、私の鈍さは改善しなかった事だろう。
瑞希君にまだしつこく
「鈍感」と言われるけど、少しは成長してる…よね?
東京に来て良かった。
そうしみじみ感じていた。
後1年半…東京でしか味わえない貴重な体験をして、大切な想いを積み重ねて行こう。
流星と一緒に……