我妻さんの写真は、興味深いし素敵だ。


本人から『彩』の意味や、写真の撮り方について聞いてみたい。



そう思い、矢継ぎ早に質問をぶつけると、彼はニカッと笑う。




「昼食に付き合ってくれたら、教えてあげる!

もちろん奢るよ?

マジでガチでゴチ!
この親父ギャグどうだろう?ワハハッ!」




陽気な彼は立てた親指で、背後のエスカレーターを指差した。



流星が腕時計に視線を落とす。

私も覗き込むと時刻は13時過ぎ。



私達のお腹も空いていた。

お昼はどこかで食べる予定だったから異存ない。



我妻さんに連れられ、一つ上の階のレストラン街に行く。



流星の腕に掴まりながらひょこひょこ歩く私を見て、

我妻さんは何も聞かずに歩く速度を緩めてくれた。



しかも常に私の2〜3歩前を歩き、前から来る通行人がぶつからない様に、人避けにもなってくれる。



それを恩着せがましくもなく、偽善的にも感じさせず、極めて自然に振る舞う彼に好感を抱いた。




「寿司屋はどう?」と言われたけど、流星が生ものは食べられないから断った。



生魚が嫌いな訳じゃなく、免疫力を薬で抑制しているから、感染予防の為に避けた方がいいらしい。



出会ったばかりの我妻さんにそこまで説明するのも…

そう思い、理由を言わずに断ったけど、



彼は嫌な顔一つせずに

「じゃあ、あそこの洋食屋にしようか」

別のお店を提案してくれた。




まだランチタイム中の日曜日のレストランは、人が途切れずほぼ満席状態。



賑やかな店内は話し声や笑い声で、流れるバックミュージックのジャンルさえ聞き取れない程。



そんな中でも我妻さんの声は、張り上げずとも不思議と良く通る。



低いバリトンの声の響きは、お喋りに夢中な隣のテーブルの奥様達まで思わず振り向く程に、人を引き付ける。




メニュー表を広げながら

「ここのクラブハウスサンドは、僕の知る中で3番目に旨かった」

と言うので、彼に倣(ナラ)いそれを注文する。



流星も同じ物を選び、更にラザニアグラタンとオムライスも注文し、


見た目からは想像できない大食振りで、我妻さんを驚かせていた。




「あの、さっきの質問をもう一度してもいいですか?」



ウェイターが注文を聞いて去って行くと、早速彼に問い掛ける。