私と握手して流星と握手して…
何が可笑しいのか「ワハハッ」と陽気に豪快に笑うこの人が、
この写真展の主催者……
何だろう…我妻ミチロウさんという人のイメージを固めていた訳じゃないのに…
予想外と言いたくなるこの人柄は……
我妻さんの年齢は多分30代前半くらいで、
身長は高くないけど、がっしりとして大きいと感じさせる体型。
明るい茶色の短髪。
揉み上げから顎に繋がる綺麗に整えられた短い髭が、四角い顔立ちに良く似合っている。
少し垂れた目尻が柔らかい印象を与えるから、
体格が良くても髭を生やしていても、恐い人には見えなかった。
我妻さんがなぜ私達に声を掛けてきたのかと言うと…
「僕の分かり難ーい写真を、目を輝かせて語る少女がいるとは思わなかったよ。
いや〜実に珍しい、アンビリーバボー!!ワハハッ!」
と言う事らしい。
分かり難いって…自分で言ってしまってるよ……
珍しいのは私じゃなく、自分の写真にそんな事を言う我妻さんの方だと思う。
「彼女にだけじゃなく、君にも一言言いたい事があってね。
ちょっと見せて…」
我妻さんは手を伸ばし、流星の着ているライトグレーのジャケットのボタンを素早く外した。
「うわっ! 何するんですか!」
当然驚き飛び退く流星。
私も「もしかしてそっち系の人…?」なんて思い驚いていたが、
流星を脱がそうとした訳ではないらしい。
「そんなに驚く事ないだろう。
そのジャケットのブランドが気になっただけだよ。
君高校生くらいだろ?
僕はロリコン趣味の同性愛者じゃないから大丈夫。
それに、ちゃんと美人な奥さんがいるしね、ワハハッ!」
ジャケットのブランド……
流星が着ているジャケットの前を開き、
内ポケット辺りに縫い付けられたブランドのタグを見せると、
我妻さんはまた「ワハハ」と笑い出した。
「やっぱりな〜!ほら見て、僕のダークグレーのジャケットと色違い!
それだけが気になっちゃって、どうしてもツッコミたくて声掛けたのさ。
ワハハハッ!」
「………」
凄くどうでもいい理由で声掛けたんだ……
でも、こうしてお話し出来た事はチャンスかも。