「流星、あっち側の写真はもういいの?」
「ん、3周も見たからもう十分。
紫は…この写真の前にずっと居るけど、どう思った?」
「一言で言うと…目から鱗(ウロコ)だった。
凄く参考になったし、『彩』の意味も分かった気がする」
「へぇ、それは是非詳しく聞かせてもらいたいな」
「うん!あのね、左側の写真パネルは………――――――――――――――――――」
私が感じた事を、流星にも共感して貰いたくて、
写真パネルを指差しながら、夢中で説明していた。
すると突然、一瞬の眩しい光を浴びせられ…
驚いて光の方向に顔を向けた。
私達の斜め前…2枚のパーテーションの間に、一人の男性が立っていて、
カメラのファインダー越しに私達を覗いていた。
写真を撮られたみたいだけど……なぜ?
驚く私達に向け再びフラッシュがたかれ、
その後カメラを顔前から外したその人は、にこやかに笑いながら近付いてきた。
「Этo хopoший взгляд!
(いい表情だねー!)」
顔は純和風だけど…外国の人かな?
話し掛けられても、彼の話す言語は何語なのか…
残念ながら、英語ではないという事しか私には分からない。
流星も首を捻っているから、てっきり分からないのかと思っていたが…違った。
流星が何語か分からない言葉で話し出す。
「Когда внезапно сфотограф ировать, яв беде…
(突然写真を撮られると、困るのですが…)」
「君、ロシア語できるのか!ワハハッこりゃ驚いた!
そういや君、何と無く西洋の血が混ざった様な顔立ちだね〜、ロシア語圏のハーフ?クォーター?」
「いえ…知る限りの先祖は日本人ですが……それよりあなたは?」
流星がそう言うと、その人はその場で何故かクルリとターンをし、
恭(ウヤウヤ)しく紳士的な礼をしてニカッと笑った。
「Каждый из дамы и господа!
(紳士淑女の皆様!)
僕の写真展へようこそ!
初めまして、我妻ミチロウです」