昼時の珈琲ショップには、珈琲カップを片手に新聞を広げているワイシャツ姿の中年男性や、

キャミソールから白い肩を露出して、お喋りに興じる女子大生達。



路駐車を避けて走る自転車と、紙袋からフランスパンを覗かせ、アパートのドアを開けるミニスカートの婦人。



人物が加わったこの写真は、置物の様な猫一匹の無機質な世界から、

急に色を…光を…音を…匂いを…時間を…私に感じさせる。



白黒写真のこの空は、
きっと真夏の澄んだ青い色。


香り立つ珈琲ショップのパラソルは緑色で、

ブロンドの髪を結い上げている女子大生の服は、鮮やかな赤かな…

店内から夏のお昼に相応しい軽快なボサノバが聞こえてくる気がする。



3階建てのマンションの壁はきっとクリームイエロー。


そのマンションに入って行く婦人は、買ってきたばかりのパンで

これから昼食のサンドイッチを作るのかもしれない。



ほら…人物が入ると白黒写真がこんなにも生き生きと色付き、私の想像力を掻き立てる。





閑散としている写真展では他人の事を気にせず、好きな様に作品と向き合える。



近付いて細部に目を凝らしたり、離れて全体を見たり、行ったり来たり。



3つ目の作品は、雪道を登校する小学生と通勤途中の大人達の写真。



4階建て集合住宅の前の雪道で、雪玉をぶつけ合う小学生。

バス停に古いトロリーバスがやって来て、通勤の大人達が乗り込もうとしている。



これも素敵。

子供達の笑い声や、「やっとバスが来た」と凍える足で急いで乗り込む人々の息遣いが聴こえてきそう。




4つ目は多分…農家の大きくて古い木造家屋。



季節は秋かな…

放し飼いの鶏にエサをまくお兄ちゃんと、その鶏を追い掛け、兄に怒られている小さな弟。



父親は木箱に座り、豆を莢(サヤ)から外す作業に没頭している。



母親の姿は写真には写っていないけど、煙突から煙りが細く棚引いているから、

家の中で昼食の用意をしているのかもしれない。