瑞希が廊下に向けて呼びかけると、紫がはにかみながら姿を現した。
「…… やば……
…可愛い過ぎる……」
瑞希が自信満々言うように、確かに俺のストライクゾーンど真ん中な風貌に作り上げられていた。
これはヤバイだろ。
これから外出すると言うのに、こんなに可愛い紫を人目に晒したくないと思ってしまう。
コバルトブルーの膝丈ワンピースに、黒のレースのボレロ。
ウエストには濃紺のリボンが巻かれ、正面で大きく蝶々結びにされている。
いつもは下ろしている艶やかで真っすぐな黒髪は、
今日はサイドを編み込み、高い位置で一つに結い上げられていた。
毛先はヘアアイロンでウェーブが付けられ、ふんわりと散らしてある。
メイクは高校生らしさを失わず、控え目な色合いでナチュラル。
しかし、いつもの彼女よりは少しだけ大人びて見え、ツヤツヤ光る唇が妙に色香を放っていた。
いつもの紫…すっぴん制服姿の彼女も十分にそそるけど、
こんな風に着飾った紫は視覚に刺激的で、新鮮味も加わり俺を興奮させる。
思わず彼女を引き寄せ、ギュッと抱きしめてしまう。
「りゅ…流星、メイクが付いちゃうから駄目だよ」
紫は俺の胸元を押し返し、赤い顔を上げた。
「外出止めにしない?」
「えっ!? 何で?」
「今すぐ脱がせて愛し合いたい」
正直な感想を述べると、
彼女は呆れ顔で「はいはい」と軽く流してしまう。
紫を腕の中に囲いながら、新鮮な姿に目を奪われていた。
瑞希はメイクより髪型に時間を掛けたのだろう。
プロの様な仕上がり。器用な奴だ。
時間を掛けた完成度の高いヘアアレンジ。
だけど…
結んである物は、解きたくなるのが男の性。
髪を縛る紺色のリボンに手を掛けて…瑞希に怒鳴られた。