今更に明かされた流星の嘘に驚いていると、
やっと戻ってきた流星が、苦笑いしながら椅子に座った。
「ごめん、あの時は紫が学校辞めるなんて言い出すからさ…
引き止めたくて、咄嗟に嘘ついた。
本当は中退してもお金は掛からないよ」
「流〜星〜!」
「ごめんて。
だけど、あの嘘のお陰で、俺達は今一緒に居られるから、いいだろ?」
「…… うん」
確かにあの時、流星が嘘をついてくれなければ、学校を辞めていたと思う。
そうしたら、流星が記憶を取り戻す事も、私と想いを通わす事も無かった。
そう考えると、あの嘘には感謝の気持ちも湧いてくる。
「瑞希との話し聞いてたんだけど…
迷惑とか負担とか言われると悲しいよ。
君の助けに少しもなっていない自分の非力さを呪いたくなる」
「そんな意味で言ったんじゃないよ!
流星は支えてくれてるよ?
流星が居なかったら、こんなにリハビリを頑張れていない。
側に居てくれるだけで、どれだけ心強いか……」
必死に弁解していると、瑞希君がこう言った。
「だったらさ、迷惑とか負担とか言わないで、大ちゃんにこう言ってあげなよ。
“頼りにしてる”ってさ」
「瑞希君…」
瑞希君に諭され、目の覚める思いがした。
頼らず自分で…
人に依存しないその気持ちは、機能回復にとって必要ではあるけど、
同時に流星を傷つけていた。
流星を傷つけるだけじゃなく、
私の心も窮屈になり、焦って苦しめていた。
今出来ない事は頼ってもいいんだ。
そうしたら私も流星も笑顔でいられる。
努力して一歩ずつ前進する喜びを分かち合える。
“頼ってもいい”
その言葉は、張り詰めていた私の心を、ふっと軽くしてくれた。
流星の方を見ると、優しく微笑み頷いてくれる。
「流星…帰りたい。
柏寮に早く帰って、皆と過ごしたい。
今の私は出来ない事だらけ…
それでもやっぱり帰りたい。
流星、大変だけど私を支えて?
頼りにしてるから、ずっと傍に居て?」
「ありがとう…そう言って欲しかった……
傍にいるよ。
ずっと君の傍にいる。
だから帰ろう、柏寮に」
「うん!」