だからと言って、入院中の私が、流星の欲求不満を解消させてあげれる筈もなく、

なんて言ってあげたらいいのかも分からず、


気まずい空気の中、無言の流星から目を逸らし、

瑞希君の差し入れの飲むヨーグルトに、ストローを差してみた。



それを飲もうとした時、

「あのさ…」

流星が急に喋り出すから、


紙パックを握る左手に力が入ってしまい、

白い液体がストローから飛び出し、病衣の胸元に掛かってしまった。




「あ…」



「あ〜あ、紫ちゃんはこのタイミングでそれだもんな〜

飲むヨーグルトを胸元に掛けるなんて、
天然通り越して悪意を感じるよ。

大ちゃん可哀相〜」




「え〜? これ買ってきたの瑞希君じゃない。

それに、なんで零しただけで、悪意とか言われなくちゃいけないのよ。

意味分かんない」





瑞希君の言った意味は全く分からなかったけど、

流星が「トイレ…」と言い、前屈みに部屋を出て行ったから…

どうやら私の行為は、エロを連想させる物だと言うことは分かった。



流星がトイレに行っている間、
瑞希君に後ろを向いて貰い、汚れた病衣を脱いで着替えをした。


素早くとはいかないけど、着替えは自分で出来る。


着替えながら、さっきまで流星と話していた事を、瑞希君に相談してみた。



柏寮にすぐにでも帰りたいけど、流星に負担を掛けたくない。


私は自力で歩ける様にならないと帰れないと思ってるけど、

流星は「もっと俺を頼って」と言う。




ふんふんと腕組みしながら聞いていた瑞希君は、

着替えを終えた私に向き直り、真顔でこう言ってくれた。




「大ちゃんの言う通りだよ。

僕も協力するから帰っておいで。

大丈夫、何とかなるよ」




「瑞希君…ありがとう…

でもね、私 皆の負担にはなりたくないの。

柏寮には凄く戻りたいけど、迷惑かけてまでワガママ通すのは……

やっぱり無理かな…フラノに帰った方がいいかな…

こんな状況の中退なら、学校側だって500万払えと言わないと思うんだよね……」




「500万? ああ、大ちゃんが前に嘘こいたやつね」




「嘘? 特待生の中退は、免除分の学費、500万円の一括納入って…あれ嘘なの?」