今ベット上でしているリハビリは、麻痺腕の“伸筋刺激運動”というもの。



ベットの端に足を下ろして座り、

麻痺側の右手を体に沿わせてベットに付け、

その腕に体重を乗せていく。



右手は肩から指先まで全く動かせず、

肘と手首は曲がった状態で、

指も何かを握っている様な形で安定している。



その麻痺腕を固まらない様に、

左手で無理矢理開いたり伸ばしたりして、動かさなくてはならない。



無理矢理伸ばしたり揉んだりすると、痛みはないがピリピリした痺れが走る。



不快なこの痺れも、動きを取り戻す可能性に繋がると言われたら、喜んで受け入れる。



思う様にならない自分の体に、落ち込みや不安が無いと言ったら嘘になるけど、


それでも回復の可能性を信じ、前向きにリハビリに励んでいた。



地味に見えるこの運動も今の私には結構キツイ。



額に汗が滲む。

ポタリとシーツに落ちた時、流星がボソッと何かを呟いた。




「え? 流星、何か言った?」



「謝ってもいいかなって…
言ったんだよ…」



「謝る? 何について?」



「こんな辛い思いをさせてる原因の一端が、俺にある事について…」



「………」





リハビリを中断し、流星の方に体を向けた。



私を見つめる茶色の瞳は、いつもより暗い色に見えた。



そうか…
大樹だけじゃなく、流星も責任を感じていたんだ……



あの日、大樹を柏寮に呼び寄せたのは流星。



彼の思惑では、大樹の到着時間に私はクリスマスコンサートに行っている筈だった。



しかし幸か不幸かその思惑が外れ、

私が居合わせた事により、今の状況がある。



大樹を呼び寄せた事についてか、

それとも、到着時間を読み間違えた事についてかは分からないけど、

流星は自分の行為を後悔している。



私は誰にも謝って欲しくない。



流星が謝ると言うなら、私だって謝らなければならない。