そう言うと、

「こんな時に店の心配なんてするな」

と父に怒られた。



母にも

「今は自分の事だけ考えてなさい」

と叱られた。



青空は

「姉ちゃんの分まで俺が働くから」

と言ってくれた。




私の家族は最高だと心から思う。

温かい家族から愛され、私は幸せ者だ。


でも…

もう一人の家族とも言うべき大切な人がここに居ない事が、さっきから気になっていた。




「大樹は…?」



そう言うと、皆の顔が一斉に曇った。




「外来の待合室で瑞希と一緒にいるから、俺が連れて来るよ」



流星はそう言って一人ICUを出て行った。



大樹なら何があっても、こんな状況の私の側から離れないと思うのに、

なぜ待合室に居るのか…




「お母さん…大樹に…」



“大樹に何かあったの?”
そう聞こうと思ったのに、逆に母から聞き返された。




「大樹と何かあったのかい?」



「あっ…」



「はぁ…

何で大樹が東京に来てたのか、何があって階段から落ちたのか、

言いたくないなら、今は聞かないけど…

大樹のあんな姿は見るに堪えられないよ……」



「あんな姿って…
大樹どうしたの?」



「お母さんにも分からないよ。

何を聞いても一言も喋らないし…

まるで廃人みたいになっちゃって……

あのまま連れて帰ってもいいものかねぇ」



「…… 私が大樹と話すよ…

お母さん、暫く流星と大樹と3人にしてもらえないかな。

少しだけでいいの。

3人だけで話さなければならない事があるの」



「それはいいけど…

でも目が覚めたばかりで、そんなに喋って大丈夫かい?

無理すんじゃないよ?」



「大丈夫。

頭を動かしては駄目と言われたけど、話しをするのは問題ないって言ってたから。

気分も悪くないよ」