え?

 中途半端な体勢で振り返った私に、徳井さんが言った。

「阿達さん、今日の午後はお時間ありますか?良かったら、前に言ってた昼食に行きませんか」

 ・・・あら。私はとりあえず腰を真っ直ぐに伸ばして向き直る。困ったな、また何てタイミングの悪い・・・。

「あ、今日は―――――――」

「ジュンコさん、遅いよ」

 答えようと口を開いたところで、明るい声が被さった。

 徳井さんが、え?と私の後ろを見る。私もパッと振り返った。この声は、あらら――――――――

 口の左端をひゅっと上げてひょうきんな顔をした龍さんが、立っていた。

 長袖を肘までまくっていて、大きな手をズボンのポケットに突っ込んでいる。陽光を浴びて彼の茶髪や青いピアスが光り、眩しそうに細めた瞳がこちらを真っ直ぐに見ていた。

「え、龍さんもう終わったの?」

 私が驚いてそう聞くと、うん、と頷いて彼はスタスタとこちらにやってくる。そして私が拾い損ねた缶を拾いあげて、自分のゴミ袋に突っ込んだ。

「待ってても来ないからさ、迎えにきた」

「あ、ごめんね」

 ぼーっとしたり徳井さんやクリちゃんと会ったりで、私はかなりペースが遅れていたらしい。私が謝るのに、いや別にいいけどさ、と返して、龍さんが徳井さんの連れるクリちゃんに目を留めた。