「・・・しばらく見なかったので、体調が悪いのかと思ってました。何だか、感じが変わりましたね。一瞬判らなかったです」
掠れ気味の心地よい声。うーん。この男の人は、本当に静かで落ち着いてるよね・・・私はクリちゃんを撫でながら答える。
「そうなんですよ。姉にイメチェンを強要されまして・・・しばらくバタバタで、ゴミ拾いに来れなくて」
クリちゃんが手を舐める。私は笑いながら手を引っ込めた。
「ダメよ、ゴミ拾ってた手を舐めちゃ」
彼女の舌から逃げる為に、立ち上がった。視線を感じて顔を上げると、徳井さんがじっと見ているのに気がついた。
・・・うわ、何だろ。私が微かに身を引いたのに気がついたらしい彼が、少しばかり慌てた声を出す。
「あ、失礼。雰囲気がえらく変わったな、と思いましたけど―――――――――あの、髪型も服装も似合ってます」
「・・・ありがとうございます。姉が喜びそうですよ、それを言ったら」
徳井さんの瞳が眼鏡の中で微笑んだのが判った。私も彼に微笑みかけて、その後ろの方に新たなゴミを発見した。
あ、ゴミ発見。
「では失礼します」
会釈をして徳井さんの横を通り過ぎる。そのゴミを拾おうとして手を伸ばしたところで、あの、と声が聞こえた。