一体何がそんなにおかしいのだ、私は憤然として馬鹿笑いを繰り返す男性をにらみつける。龍さんは口元を隠しもしないで盛大に笑った後で、わざとらしく体を伸ばしながら言った。

「本当は映画とか、お茶とかさ、一般的なデートを考えてたんだけど、や~めた」

「え?」

 わけが判らなくて私は首を傾げる。やめた?・・・あら、それってデートをやめるってことかしら。ちりちりと胸のところが痛んで、思わず指先で撫でる。

 やめるって言葉にこんなにガッカリするとは思わなかった。自分でもショックを受けている顔をしているのではないかと心配になったけど、龍さんは変わらない態度でそのままサラリと言った。

「室内は、ダメだ。ちょっとジュンコさんの変化にやられちゃったからねえ~。俺が君を襲わないように、野外にしよう」

 ・・・ぶっ・・・。噴出しかけて、急いで回れ右をした。もう、もう!この人は本当に・・・。

 どう反応していいか判らないままで風を受けて突っ立っていたら、後ろから、まだ笑いを含んだ声が聞こえた。

「今日は、俺もゴミ拾い参加させてよ。たまには料理作る以外で人の役に立とうかな、と思うし」

 あら。私はまだ若干照れていたけれど、何とか振り返った。

 龍さんは笑っていた。

 折角の休日を私の日常に付き合わせるのは申し訳ないと思ったけれど、それを口に出せばまた叱られるのだろう。それが判るくらいには、この人に慣れて来ていた。

 きっとこういうよね、『俺の勝手でしょ』って。