美桜の手に薔薇が一本、握られているのに気がついた。
そういえば、美桜と初めって会ったときも薔薇を持っていた。
「それ、どーしたの?」
俺が薔薇を指差すと、美桜も薔薇の方へ視線を向けた。
「キレイでしょ?」
薔薇を顔の近くまで持ってきて笑う美桜の方がキレイだった。
「朝ちゃんにもらったんだ」
朝ちゃんとは俺らの担任。
「あー職員室の朝ちゃんの机に飾ってた花?」
「そう」
「どうして?薔薇??」
「・・・・「お母さん」のお墓参り」
美桜はそれ以上何もしゃべらなかった。
「お母さん」って言った時、悲しい冷たい響きがあった。
たぶん・・・俺が勝手に踏み込んでいい領域じゃないんだと思う。
でもきっといつか・・・