僕が知っているのは百合子の笑顔だけ・・
それだけで後は何も知らないんだ。
僕はまた百合子の入院している病院に来ていた。
「今度も下痢ですか?」
「・・・亮ちゃん」
今まで見たことのない暗い目で僕を見つめる。
何をそんなに怖がっているんだろう。
「僕は百合子のそばにいてはダメですか?」
「・・・」
「ずっと百合子のそばにいたい」
不安そうな顔を隠して百合子は笑ってみせた。
「あたし、死ぬよ?」
「え?」
「今も生きてるのが不思議なんだって。
小さい頃から体が弱くて、周りに気を使われながら生きてきたんだ。
あれはやっちゃダメ!
これは大丈夫?
なんて言われながら」
百合子の大きな目に溢れそうな涙。