いつからか分からないけれど、俺の頬に涙が流れていた。 声を抑えるのに必死だった。 菜花を抱きしめる腕に力が入る。 今の俺にはそれしかできない。 菜花は「痛いよ」って笑いながら話を続けた。 「でも入院生活も悪いものではありませんでした。 王子様は毎日、会いに来てくれました。 ある日、綺麗な真っ赤な薔薇を持ってきてくれました。