帰りの電車。
まさか会うとは思ってなかった。


もし空野中へ通ってなかったら同じ中学に通っていたはずだから同じ駅ということは知っていた。


2人席に座りながらぼーっとしていたら、いつの間にか絢は目の前の椅子に座っていた。





げ。マジか。
ん?あ、連れがいるんだ…。え!でか!


見るからにお相撲よりのでかい体の連れが絢の目の前で向かい合って座っていた。


でもなんか…あんま喋ってないよね…?


本当に友達なの…?


と、勝手に心配しながら英単語帳を開いた。




単語覚えるの苦手だなぁ………


ふとこんな会話が頭をよぎったーーー



『特進に特待で行くんだよね』


朝颯斗が言っていたこと。


そう!今目の前に座っているのは…
かの特待生なのだ。


少し気になるし…話しかけてみようかな。
ちょうど連れの人も寝てるみたいだし。







人間考えより手が先に出てしまうものなのだろうか。
亜航は思わず彼の肩をつついていた。




「あ…の…………」



突然声をかけられ不審そうに絢は振り向いた。


「?」


微笑むでもなく、なんの表情もない。



「颯斗と拓海の従兄弟なんですよね!私2人とは幼馴染なんです!颯斗とかと苗字一緒だし、見分けつきにくいからさ…、下の名前で呼んでもいいかな…?」



一気に息つく間もなく話した。



私のことを向こうが知るはずもなく未だ不振げな顔をしている。


「あ〜………、もしよかったらアドレス…交換してもらえますか………?」



えっ、ちょ、何言ってるの私!口が勝手に喋ったよ!どうしよう、え…。



「颯斗に聞いて」



「…あ、分かった………」


彼はそれだけ話してまた前を向いてしまった。


なによ……………
集会の時は他の女の子にアドレス教えてたくせに………。



と少しだけ思った。