普通列車、K山行き発車します。
ドアにお気をつけ下さい。


春だ。高校生だ。




「よぉ。お前ももう高校生か、ちっこいのー!(笑)」

「会えば嫌味ばっかり、なんか他にいい話とかないの?ほんとつまらん。」

幼稚園と小学校低学年まで同じところに通っていた自称幼なじみ颯斗。ここ最近は毎朝同じ電車である。機嫌がいい時もあれば悪い時もある…というか悪い日がほとんど。

「それがだな、亜航、お前惚れんなよな?」

「…は?」

全くわけがわからない。話が唐突すぎる。

「今度俺の従兄弟がお前と同じ学校の特進に特待で行くんだよな、しかも。イケメン。」

(従兄弟が言うかあああああ!!)

「はいはい、イケメンには興味ないですよ、人間中身ですから。」

とか口では言いつつ少しだけ、少しだけ興味あり。

「まぁ会えば分かるって。絢ってのがいると思うよ〜。マジでかっこいいから。一目でわかる(笑)亜航も特進だろ?ならクラス近いんじゃね?」

「そうだね。ま、興味ないけど。ここ、颯斗の降りる駅だよ。」

いつの間にか颯斗が降りる駅についていた。颯斗もそのことを忘れていたようで慌てて椅子から立ち上がる。すかさず亜航はその椅子に座る。

「じゃあな、楽しみにしとけよ!」

(何をだ、てゆーかどんなけ推すの)

と、ツッコミを入れてiPodのイヤホンをぐいっと耳に入れる。
お気に入りの曲が流れてくる。心地よい春のサウンド。




春っていいなぁ…


そんな風に感じながら空野高校最寄り駅まで亜航は眠りに着くことにした。