「あ…佑斗。」


私の様子を見て、声をかけてくれた男子。佑斗。


私の好きな人。
そして、学年だけにとどまらず、先輩、後輩からも大人気な男の子。


彼と付き合ったら、どれだけ痛い目見るか…でも私は諦めたくなかった。


恋を諦めるのは、もうやめた。
フられるまでは、気持ちを貫き通そうと、決意したから。


「ちょっとめんどくさいことがあってさ。」


佑斗が私を気遣って話しかけてくれたことがとても嬉しかった。


それだけで、月夜のことを忘れられそうだった。…まあ、無理だけどね……。


「俺でよければ話聞くよ?」


「ありがとう。…でも大丈夫。」


「本当か?無理はすんなよ?」


佑斗は心配そうに私の顔をのぞき込んだ。


「うん。ありがとね。」


…顔…近い。
そして周りの女子の顔が怖い……
それに気づかない佑斗はかなり天然だよな……。


それに、こんなこと佑斗に話せるわけがない。
いきなり死神が現れてさーとか…信じてもらうどころか逆に引かれるよ…。

キーンコーンカーンコーン……


「ま、とりあえず堪えられなくなったら俺に相談しろよ?」


「う、うん。」


チャイムが鳴り、立っていた子たちも、佑斗も席につき、いつも通りの授業が始まったのだった───…。