ここはどこだろう…。
刃物を差し込んだ痛みは、ほんの一瞬だった。
白く霞んだ世界に今、私はいた。
『夢希!!
目を開けてくれ!!夢希!!』
『夢希ちゃん…!』
『夢希!なんで…っ!
目を開けて…っ!!』
佑斗、千佳ちゃん…それにこの声、絵里…。
よかった、絵里は目を覚ましたんだ。
みんなの声が遠くに聞こえる。
救急車の音も、聞こえてくる。
ここは一体……
「ここは、生と死の狭間の世界。
どっちかと言うと“死”に近いけどな」
大好きな、低く掠れた声……まさか…
ない…と。
私は声のする方に振り返った。
そこにはやっぱり、月夜が立っていた。