「お前は何で、こんなに違うんだ。
…いつもターゲットが汚れていて、いつも俺と遊んでくれたのに。お前は綺麗で真っ直ぐで、俺に戸惑いばかり与えてきやがる。……俺の調子、狂わせないでくれよ……」
縋るような、切ない声だった。
その声に、私も涙が溢れ出した。
「…それは私の台詞だよ。
なんで私の前に現れたの?
死ぬ前に来てくれれば、こんなことにはならなかったはずなのに。」
きっと、こんなはずじゃなかったんだと思う。
どこかで歯車は狂った。
でも、月夜と出会ったことで、私は素直になることが出来たんだと思う。
「こんなはずじゃなかった。
だから、俺は元の世界に戻るんだ。」
「…うん、それはわかってる。
だから私もこれ以上の欲は言いたくないの。」
「…それが、俺の調子を狂わせるってわかんねぇのかよ。」
月夜は聞こえるか聞こえないか程度の小さい声で、そう言うと、私の唇にそっと触れるだけのキスをして、消えていった。
それは久しぶりのキスだった。
月夜が消えた後、自分の手元を見ると、握っていたはずのネックレスが消えていた。
苦しい現実だけれど、思いを伝えられただけよかった。