「…夢希は本当に欲のない女だな。」


その言葉と同時に、私は月夜に抱きしめられていた。


「俺がお前のこと好きじゃないと思うなら、惚れさせればいいじゃないか。
俺に“お前を死なせたくない”って思わせるくらい、惚れさせればいい。」


「そんなこと…!」


出来るわけない。
月夜が消えるのは、絶対にイヤだ。
それに…そんなこと、私に出来ると思えない。


「出来ないって思って諦める。
それがお前の悪いとこだよな。」


「好きなら惚れさせればいいだろ?」


月夜はニヤリと笑った。
いつも通りの月夜の顔に戻っていた。


「……いいの。
好きって伝えることだけでも出来たし、こうやって抱きしめてくれて嬉しかったから…。」


こんなことを言うから、欲がないって言われるのかな。


「もうすぐ5分が経つ。
5分でも会えて嬉しかった。…ありがとう、月夜。」


「…んでだよ!!」


私は月夜の腕の中から抜け出そうとして、より強く抱きしめられてしまった。


「…っ。」