「返事…聞かせてくれる?」
「あの……。」
「……。」
佑斗は黙ったまま、私の顔を見ていた。
すべてを見透かすような、綺麗な瞳だった。
「他に好きな奴がいる?」
「そんなこと…!」
“あるわけない”
そう言いかけた言葉は最後まで言葉にならなかった。
「岩本は、月夜さんが好きなんだろ?」
佑斗の一言に私は驚いて顔を上げた。
今、佑斗がなんて言ったのか。
私の聞き間違いだろうか?
「そんなわけ……だって月夜はいとこのお兄ちゃんで……」
「それも、うそ…だよな?」
…知っていたんだ。
私のうそを佑斗はずっと見抜いてたんだ…。
「…ごめんなさい。
こんなこと言ったらすごく最低だと思うけど、あと2日…ううん、1日でいい。
時間を…ください。」
「わかった。」
佑斗はほほえみながら、そう答えてくれた。
すぐに答えられなかった私を嘲笑うかのように、作っていたケーキは冷蔵庫の中で、ぐしゃぐしゃになっていた。
きっと、調理部の人が慌ただしく料理をしたせいで、誤って落としてしまったのだろう。
そんなケーキを一口食べると、甘いはずのチョコも、すごく苦く感じた。
その代わりに、文化祭は無事に最優秀賞で幕を閉じた。