その日からオレは、彼女のことばかり考えるようになった。 別に会話を交わした訳ではないし、名前も歳も分からない。 だけど、あの後――…。 恥ずかしそうに俯き、「ごめんなさい」と小さな声で呟いた彼女。 慌てて荷物を拾い上げ、真っ赤な顔のまま階段を駆け上がっていく彼女の後ろ姿が頭から離れない。 その早さは、まるで台風のようだった。 だけど確実に…… オレの心の中に居場所を作っていったんだ。