幻かと思った。 『会いたい』 その想いが強すぎて、ついに?……って。 だって、そうだろ? いつもあと20分は遅い電車に乗るはず。 今にも閉まりそうなドアに向かって、息を切らして走ってくるはず――。 そう言い聞かせるように、オレは目を閉じて、ブンブンと首を振る。 でも、ムダだった。 何回そうしたって変わらない。 今、隣にいるのは、幻じゃない。 間違いなく、彼女なんだ。 前言撤回。 早く行けと言った母親に感謝だ。