「ぷっ。いやぁ、お前って本当バカだよな。
学祭ごときにタキシードって……あははは」

ポンっと肩を叩かれ、振り返ってみれば
笑いを噛み殺している、瀬川周(セガワ アマネ)。

やがて、周は整った顔を崩して豪快に笑った。

「しょうがねぇだろ、楽しみだったんだから。
それより、 さっきから皆の目がこえぇ」

「お前だけ気合い入りすぎなんだよ」

「うるせー」

「まぁ、もうすぐ交代だろ?
お化け屋敷行こうぜ。何かガチで出るって騒いでるからさ」

「へいへい」

「キビキビ働けよ!ハチ公」


そう言うと、周は爽快に去って行った。

橘八朗(タチバナ ハチロウ)。

こんな名前のせいで皆から、ハチとか忠犬ハチ公と呼ばれる。

周とは幼稚園からの付き合い。

家も近く、筋金入りの幼馴染だ。