「そっかー、彼がいずちゃん好きだったのか」


「いやーあーのー」


「まっ、いいか。今彼女いるみたいだし」


「はい?」


勝手に話が進んでいっちゃってて、ついてけない。
それなのに、そんな私を放置して聖が店員に注文を頼んでいた。



頼み終えた後、もうさっきの話はなかったかのように聖はにっこりとする。


「……………」


「どうしたの?」


「いや、えーと…」


「あ、安心して」


「え?」


「別に彼に何もしないから」


…何もしないからって。



「当たり前じゃんか!」


何かする気だったわけ?
ちょっと。


「ははっ、いずちゃん、面白い」


「てか、何で聖はたまに泉になるの?」


ずっと気になってたんだよね。
まあ、私としてはどっちでもどんな呼び方でも構わないんだけど。


聖は私の問いにきょとんとした顔を見せる。


それからゆっくり口元を緩めると。



「……牽制?」


そう、言ってにやっと笑った。


けんせい……?



益々わからない。
この、掴めない感じ。


初めて会った頃の聖を思い出す。