“泉はさ。
何も知らなくって。
何も汚れてなくって。
最初、疎ましかったのは羨ましかったのかもしれない”


“孤独な俺は、温かな場所で育った子に惹かれるって”



「…私が陽のあたる場所にいたならさ、その陽で陰を照らし出すことも出来るのかなって」



自惚れてるかもしれない。
おこがましいかもしれない。

でも、暗くて深い闇にいる伊織がそう言ったから。



「……いずちゃんなら出来るよ」


その、聖の言葉が胸に染み渡ってまた涙が滲む。


「…復讐も終わっちゃった俺さ。
生きてる意味がよくわからなくなっちゃったんだ」


これは、聖の抱える闇。


「美佳もいないし。俺には家族もいない。
何もないって思ったら死にたくなった」


それと孤独。


「手首を切ったのは無意識だったよ。
なーんにも考えらんなかったから」


そう言って、まだガーゼが張りつけてある傷痕を見て聖が笑う。


「……いずちゃんが病室で毎日毎日、話をして笑って、帰るのを冷めた目で見てた」