「私ね、ジャーナリストになりたかったの。
だから、レンタル彼氏って気になって気になって。
そんな時偶然伊織と出会ったんだ」


「…………偶然」


「うん、神様の悪戯って思っちゃうような偶然」


私はふふっと笑いながら、伊織の笑顔を思い出す。

「……レンタル彼氏なんて仕事、何でしてんだろーってずっと思ってた。
…そんな理由、私にはわかるわけないよね。
聖にお気楽って言われるのもわかるよ」


「…いずちゃん」


「ううん、わかってんの。
自分が果てしなく幸せだったんだって。
それを伊織に押し付けようとしたのは私。
伊織の傷を、何も見ようとしないで自分の不安を押し付けたのは私」


「…………」


聖はぐっと言葉を飲み込む。
そんな聖に目を細めて微笑みかける。


「聖の闇も、伊織の闇も、私がわかるわけないんだって。
だって、私は何不自由なく暮らしてきたんだから」




でもね。



だからこそ。





「だからこそ、私は光をあげられるんじゃないかって思ったんだ」


「光……?」


尋ね返す聖に頷く。