私が伊織の苦しみを本当にわかってあげられるのか。

それだけが不安だよ。



もう、会ったら二度と手放さない。

そう、誓うけど。

伊織の闇が深すぎて、私の光が届かないんじゃないかって思えたんだ。



何を、あんなに抱えているのか。
ずっとずっと、わからなかった。


実の父親が、実の母親を殺すって。



想像もつかないよ。


私には、わからない。




“…俺を連れ出してくれる人”


“レンタル彼氏って残酷だね”


“…そうだな”


俯いて、そう呟いた伊織。
あの時、何を思っていたの?

伊織の心に潜む深い闇から、連れ出せる人になれるかな。

レンタル彼氏なんて残酷なこと、わかっててやってたのはそれしかなかったのに。


その、レンタル彼氏で自分は何もかもを失うのに。



ぐるぐると、伊織への感情が溢れだして止まらない。


何も出来なかった、自分が本当に悔しい。歯痒い。


もしも、過去に戻れるなら必ず伊織を連れ出してみせるのに。